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一期一会

「ウェブ進化論」について


車内広告で目に止まった梅田望夫著「ウェブ進化論」を読んでみました。
検索エンジンのグーグルの構想を主軸に、ウェブ社会の可能性と問題点を示唆した
中々読み応えのある一冊でありました。
増殖するウェブサイトと無限大のネット空間。そして核となるオープンソース。
世界中の無限大の不特定多数の知を全て検索集積し、玉石混交から〃玉〃を効率よく
再編し、優れた知性を共有し世界を良い方向に導こうとするグーグルの試みは果たし
て成功するのか、否か!知性が生き物となって世界を駆け巡るのである。
著者に言わせれば、「インターネット神への信仰心」がグーグルの個性なのだそうで
あります。これはネット上にアカシックレコードのようなものを作ってしまおうと
いう考え方で、究極的には人間を介さず、テクノロジーだけでネット上の全てを
自動制御する世界を目指しているようです。勿論、情報を発信するのは人間ですが、
その情報に付加価値をプラスする役目をコンピュータに任せようと言う訳です。
全く価値のないと思われる情報でも、世界に一人でもそれを見たい人がいれば、
それは保存される。更には「富の公平な分配」を実現する為のネット上の経済圏を
確立したいようですが、これはリアルの企業組織の考える価値観を破壊するもので、
新しい創造の為の破壊であります。

リアル世界とネット世界の緩やかな融合を試みる新世代と、ウェブ社会の危険性と
脆弱性に危惧を抱く旧世代。テクノロジーで世界は変われると信じる世代と、
コンピュータは道具に過ぎないと揶揄する世代の静かな戦争が始まっているようで
あります。書き手のメッセージを、世界中の不特定多数と最大限共有できるシステム
をあらゆる角度から再構築する為には、当然言語の壁をクリアする必要がありますが、
グーグルも自動翻訳技術の開発に邁進してるそうです。
問題は国家権力の壁であります。小さな個々の塵がやがて巨大な山となり、人々が
不動の世界感を共有できた時、国家は何を思うのだろうか。
国家と言えば、仮に幸か不幸か国家権力の象徴であるエシュロンとグーグルが
合体した時、それは〃世界政府〃となるかもしれません。
エシュロンとグーグル。共にアメリカ発で衛星を保有し、巨大なコンピュータシステムで
情報収集に精を出し、エシュロンは世界を傍聴監視、グーグルは世界中の情報を
統御する。国防を担うエシュロンと新しい価値観を創造しようとするグーグルは新旧の
価値観を象徴するものであるだろう。
問題点の一つとしては、英語圏と非英語圏或は東洋との価値観の差であり、根っこの
部分が違う。この差を果たしてテクノロジーが補う事ができるだろうかという疑問が
あります。アメリカ発の仮想空間が反米勢力を駆逐あるいは凌駕できるかという点も
未知数であります。
魑魅魍魎のウェブ社会を、テクノロジーが神の視点へと昇華できかどうかは難しい。
大衆レベルで言えば、アメリカや中国や韓国のウェブサイトがどんなコンテンツを
発信しているのかを、その他の映像や音楽も含め誰もが日本語で簡単に閲覧できる
環境は凄い事で、その時初めてネットは既存のメディアを超えるんじゃないか。

〃大衆は愚かである〃というレッテルは権威側が2chなどの巨大匿名掲示板に
張りたがる傾向にありますが、玉石混交はリアルも同じなのであって、今迄リアルで
発信できなかった〃石〃も自由に発信できる様になりました。
石も磨けば玉になるのか、石は永遠に石のままなのかは、意見が分かれる処ですが、
「国家の品格」の著者藤原正彦氏は、〃国民は永遠に成熟しない〃と断言する。
〃過去現在未来において国民は世界中で常に未熟である〃と述べ、真のエリートを
育てる事が大事であると提言してます。人類の過ちは、結局の所リーダーではなく、
大衆の中にあったのではないかという訳です。
仕事の場がリアルからネットに移行しつつあるというのは限られた職種だろうし、
グーグルそのものが制度になれば話は別ですが、富の公平な分配を金融資本が簡単に
受け入れるとは考えられない。
2005年の世界のネット人口は推計で7億〜8億だそうですが、世界の総人口65億から
みれば、1割強であります。今から16年前の1990年に発信された「もし世界が100人
の村だったら」に較べると、えらく進歩したものですが、それでも世界には栄養失調
その他で苦しむ人達や、読み書きができない人達も億単位で存在します。
世界を変えるという壮大な試みは、この底辺の部分にも手を伸ばしてこそ、万人の
支持を得るものだろうと思います。
この本にも、発展途上国のコレラの問題をネット上で見ず知らずのプロ達が協力
し合って解決したという話が載ってますが、このような善意が実る環境が大事であると
思います。コンピュータを神へと昇華しようとするグーグルの心には賛同しかねますが、
弱肉強食をブチ壊す事も含めて、知性を再編成するという試みにはエールを送りたいと
思います。
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by gyou-syun-u | 2006-04-23 22:37 | 世界情勢 | Trackback | Comments(0)
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